
十二分に愉しめるマダム・バタフライ
ゼフィレッリ演出、ワダエミ衣装だけあって、おそらく現在選択できるディスクとしては最もニッポン人に違和感の少ない『蝶々さん』なのではなかろうか?
ピンカートンの「現地妻」となる蝶々さんは、このとき15歳! 配役のフィオレンツァ・チェドリンスのヴィジアルはさすがに無理があるのだが、第2幕以降、息子が登場してからはその違和感もなくなる。といっても、この時点で蝶々はまだ18歳なのであるが・・・。
まあ、オペラの映像でそんなことを言っていても詮無いことなのであるが、チェドリンスの歌唱力の高さ、声量の豊かさ、さらに迫真の演技の前には些細なことに過ぎないとも言える(八千草薫の映画版は可憐だったけど)。
ピンカートン役のマルチェッロ・ジョルダーニも立派だ。朗々としたハイトーンであり、この男とんでもない植民地主義の手先なのだが、それもまた忘れ去るほどの歌いっぷり! といったら嘘になるか?
今回初めてDVDで鑑賞したが、オリエンタリズムという観点はともかく、蝶々と女中スズキの封建的主従関係が気になった。蝶々がスズキを難詰するシーンでは、蝶々役チェドリンスの迫力があるせいで余計に。このシーンの蝶々はまるで夜の女王(モーツァルト『魔笛』)みたい。
いずれにせよ本ディスクは、この有名な傑作オペラを愉しむには十二分のクオリティーだと思う。録音も野外公演のライブにもかかわらず問題なし。フォルティッシモの中心が抜けて聴こえるような気がするところもあるが、大きな瑕疵ではない。映像も悪くない。
ダニエル・オーレンという指揮者は初めて聴いたが、大柄なつくりで、情緒も豊かなよい演奏だ。カラヤンの弟子筋らしい。
プッチーニは、最後の蝶々の自害をどのように考えていたのだろうか? アジア的な封建主義か、あるいはアジアの神秘か? 少なくとも蝶々の行為を美しいと見ていたことは間違いないと思うが。このあたり、おそらく研究書も出ているのであろうが。
素晴らしい
チェドリンスの、歌というよりその迫真の演技に、ひどく胸をうたれました。声もとくに2幕以降、どんどん調子を上げていき、自刃の直前など涙してしまいました。
舞台的にも、幻想的な雰囲気と、まるで新宿コマ劇場?かと思われるような庶民的な風情が綯い交ぜになっていて、観ていてちっとも飽きませんでした。
やはりゼッフィレッリ&エミワダ・タッグのおかげでしょうか?
オケもちょっと走り気味な箇所があったりして、それがまた情熱を感じさせ、素晴らしいです。
最高の音楽、悲惨なストーリー、情熱、オペラって本当に素敵だと思わせてくれる、そんな1本。
素晴らしい演奏、日本については許容範囲内。限定盤でお得。
蝶々さんのビデオは、日本を舞台にしているだけあって、
音楽は二の次にして、演出や舞台装置・小道具に手厳しくなってしまいますが、
このビデオは許容範囲内で、失笑は買うものの、腹が立つものではありません。
元々西洋人が着物を着て、しかもヴェローナの大舞台で行われているのだから、
日本オリジナルのリリシズムは期待できなくても当然でしょう。
やっぱり中国を基調とする舞台装置は、やっぱりなーっと言う気分ですが、
そんな不満を払拭する合唱や人の動きはさすがです。
蝶々さんの登場の場面も、日本的ではないにしても、
最大限の神経が払われているし、本当に息を呑む美しさです。
主役のチェンドリスは、動作があまりに日本的ではないのですが、
歌は素晴らしく、清楚でしかも確実な声には圧倒されます。
ベテランのポンスを始め、ピンカートンもスズキもとても好感が持てます。
日本性にこだわってしまうと、どうしても歌でここまでの満足は得られません。
だからこれだけ素晴らしい演奏があり、演出についても許容範囲内であれば、
第一に勧められるビデオだと思います。
カラヤン/フレーニ/ポネルのビデオを観て、
金輪際蝶々さんのビデオは買わないでおこうと思っていましたが、
本当に満足して観ることができて嬉しいです。
それに再販に際してとても安くなり、お買い得だと思います。
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