
藤沢周平の長編時代小説のドラマ化。東北の小藩に生きた下級武士の息子の波乱に満ちた青春模様が、奇をてらうことのない正攻法で描かれている。義父・牧助左衛門(勝野洋)が藩の世継ぎ争いの陰謀に巻きこまれ、ついには切腹させられてしまう。反逆者の子という烙印を押された文四郎(内野聖陽)は、その屈辱に耐えて勤めと剣術に励み、仇である主席家老・里村左内(平幹二郎)への復しゅうを誓う。
社会の理不尽に直面する中で、義を見てせざるは勇無きことかとの決断を迫られる主人公の耐え忍ぶ姿、ひたむきな思いが切々としていていい。文四郎とふく(水野真紀)との宿命的な関係も物語の見どころ。敵方の松明を避けるため、舟底に横になって身を潜める場面の美しさたるや。月明かりに照らされる2人の絡み合う姿には息をのむ。また、闇に真剣の輝きだけが鈍く光る殺陣も迫力満点だ。ただ、ほとんど忍術のような秘剣村雨の再現には、肩透かしを食わされた気分。(麻生結一)
強く、切なく、清く
小説を詳細解釈して7回の枠に伸ばした訳ですが、それも良かったと思います。藤沢周平は書ききらず・説明仕切らず余韻のある書き方をします。そこが好きですが、TVドラマにするにはもう少しくどくど心理描写をしてもいいかと思います。ナレーションの有無は賛否両論だと思いますが。
文四郎とふく役のお二人の俳優さんはとても適役でした。映画よりずっと良かった。特に「逆転」の内野さんの演技、文四郎を慕う水野さんの切ない演技は秀逸でした。
何度も何度も切ない思いをさせられ、青春の熱さと初恋の清さと生命力の強さを感じ、何度も見たくなる作品と思いDVDを購入しました。
翻弄されて、運命を憎まず
若いうちに、恋をしておくものだ。おふくが、最終回で述べているように、後悔のない人生なんてありましょうか。とりわけ、青春のひとときは、淡く、時間の詰め込まれたジェネレーションであり、振り返ることでこれからを支える拠り所となるものともなる。
再び、このDVDを取り出して見ることにした。一度目と違って、多くのレヴュアーの皆さんのご意見も参考にして、「観賞」した。このテレビドラマは、力が入っている作品だと、私も思う。
時代劇ということもあり、不自然なところが目につくのは見る人の経験や知識にも依るし、作る方の力量不足もある。アラが印象強くなってしまうという点は、制作者はお金を取るのだから反省して成長してもらいたい。確かに、アブラゼミはミーンミンとは鳴かないし、荷車に重そうな勝野洋さんを乗せて引く際に、袴をたくし上げて紐で結ぶなりしなければ足に力も入るまい。
おふくの子役、伊藤未希さんは、水野真紀さんによく似ていて自然に役をこなしているし、家老横山又助役の柄本明さんは、実にいい個性が画面から伝わってくる。牧文四郎の妻となったせつ役の森洋子さんは登場時間が少なかったものの、田螺取りや日常生活の立ち居振る舞いが実に美しい俳優さんである。また、村々での演技の情景も、幼い頃の田舎風景を思い起こさせるような草の生え具合と、人物の動きがうまく相互作用の効果を伝えておりあたかもそこにいるような感覚を伝えていた。うっとうしいまでのカメラワークもなく、うまい映像だ。
しかし、文四郎殿、あの櫛はどうするんだい。友人島崎与之助に述べたように、思いを捨てたのだろうに。
DVD2枚組。315分+おまけ18分。演出:佐藤幹夫、田中健二、脚本:黒土三男。
原作に劣らない傑作
ちょうど3年ほど前の年末に放映された連夜の再放送で見てはまり、これ以降藤沢さんの小説をむさぼるように読みました。
これは凄いドラマです。
ストーリーは下級武士の文四郎と隣の少女ふくとの淡い恋を軸にしながら、藩政の陰謀、友情、剣、親子の親愛が描かれているのですが、これらが見事に調和して奥行きのある物語を作り上げています。
この原作も素晴らしいのですが、このドラマは原作と比べても遜色のない、ある意味それ以上の出来栄えとなっています。
登場人物達の目には緊張感があり、視線を交わすだけなのにそこに抑えた深い情愛を感じ、短い言葉ひとつで亡き父への思いを表したり、見事な殺陣にも驚かされてばかりです。
同作品は映画化されていますが、絶対にこちらの方がお薦めです。
時代劇はもちろんここ最近の映画やドラマでこれを超える作品には出会っていません。
食わず嫌いの方にもお薦めできる、本当に良い作品でした。
二人に聞こえていたのは互いの声と蝉しぐれ。
噂どおりの良作です。映画より支持します。事情が許さなかった愛。時を経ても互いに胸に秘めていた気持ちが切なくてやるせません。 汚名を着せられた父を恥じることなく、己の矜持にかけてふくを守る文四郎の心持はいかに。遠い日の矢場の坂、二人に聞こえていたのは互いの声と蝉しぐれ。そんなふたりだったのです
精悍な文四郎!
父の無念、陰謀と復讐心、叶わぬ恋、友情、息をのむ殺陣、ドラマとして成立するすべてがあります。「叶わぬ恋」ほど観ていて切ないものはない。内野さんは舞台出身なので声が良く通り、セリフに込められた感情がこちらにストレートに伝わってきます。最初しか出ませんが、勝野さんも良かったです。配役がよかったのもこのドラマの重要な要素です。ふく役の水野さんがこんなに美しいと思えたのは、初めてでした。友人から、ふくの懐妊を知らされた時の文四郎の涙が切ない。ラストの二人(ふくと文四郎)の「違う未来」を語り合うシーンは泣きました。
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