
新聞記事の引用と事件への感想だけの本
戦前の少年事件の新聞記事の引用と、それに対する著者の感想がこの本の主な内容です。
刺激的な時間潰しの読み物としては面白いと思いますが、少年事件の真面目な資料が必要な方は著者の『少年犯罪データベース』というHPでデータだけ見る方が有益だと思います。
著者の感想の部分が、考察でも分析でもなくただの個人的な意見に終始しており、違う事件に対して同じ感想が繰り返しつかわれていたり(教育勅語で親孝行が重要視されているのは現実の親子関係がそうではないからだ等)、犯行動機が不明瞭な加害者のことを「脳が壊れている」と表現したり、少年事件のスキャンダラスな面を強調する姿勢が(他のレビューでも指摘している方がいましたが)馬鹿にしているような、不真面目さを感じました。
また文末に「ですし。」「〜していただければ。」等の口語表現がちゃんぽんにつかわれていて読みにくかったのと、注をつけてまとめたら一行ですむところを、事件ごとに「当時大卒銀行員給料が70円」と繰り返し書かれているのも気になりました。
イメージの一人歩き。
最近少年による凶悪犯罪が増えたとの言説は、一時期ほどは聞かれなくなった気もしま
すが、それでもまだ多くの人が凶悪犯罪の増加や低年齢化を素直に信じているのは、
大手マスコミの報道を見ていれば、ある意味仕方の無いことだと思います。
私も、統計などでは凶悪犯罪の数は、昔からすればかなり減ってきているというのは知っ
ていましたが、本書のように具体事例を数多く挙げて、その実態を明確に示してくれる
というのは、認識を深めるということからも貴重で有益なことだと思われます。
それにしても、このような犯罪事例の収集とまとめは大変な作業であり、著者の情熱と
根気には驚くばかりです。しかも、犯罪研究が目的というわけではなく、世間や有識者
と言われる人たちの信じる情報の不確かさを明白にするということであり、著者の衝動
ともいえるような、一種の使命感のようなものさえ感じます。
著者のメッセージは本書内にもありますが、世間で流れている情報を無条件に鵜呑みに
するのではなく、可能な限り自分でデータを集め、自分自身で考え判断を下すべきであ
るということであり、著者のペンネームはダイレクトにそのことを主張しています。
著者の目的の故に、本書は情緒的で扇動的な方向に流れることなく(そう思わない人も
いるとは思いますが)、あくまでも情報の提供に徹しており、また、記事へのコメント
や時折挿入されるコラムで、時代背景やちょっとした解説が軽妙な語り口でなされてお
り、認識を改める上でよい助けとなります。
ただ、事件の量が多く、内容も陰惨で、だんだんと読むのが辛くなってきます。しかし、
本書に掲載されいるのは一部に過ぎず、ホームページの方ではまだ多数のデータが掲載
されているということであり、そこに載せてあるものも全てではないとのことです。
その犯罪内容も現代とあまり変わりなく、戦争を挟んでいますが、人間の本性はそんな
に変わることはないのだという、ある意味当然のことがよくわかります。
著者の意図は、何度も言うように、事実の提示により、巷に流布する言説のいい加減さ
を明らかにすることですが、その興味の対象は情報の伝達の仕方にあるといいます。著
者の言うように、これらのデータは特に隠されたものでもなく、その気になれば誰でも
入手できるものですから、世間では十分に事実を確認せずに情報が広がっていることに
なります。これは、事実がどうかに関係なく、人々が望むような情報が勝手に作られる
ともいえるし、また、何者かが自分の望む方向に世論を誘導するような、情報操作の可
能性も考えられます。この辺は大衆心理の領域であり、噂や都市伝説などとの類似点も
多く、確かに興味深い現象ですし、もっと深く知りたいところではありますが、本書の
範囲を超えています。
本書によって、自分も含めて世間がいかに情報を鵜呑みにし勝ちであることが明らかに
なり、自分で調べることの重要性を再認識することが出来るため、多くの人に読んでも
らいたい本ではありますが、よく考えると、このような本を読もうと思う人は、既に情
報を自分で吟味して、そのまま安易に信じることはないような気がします。
しかし、このようなイメージ先行の思い込み現象は犯罪状況に限ったことではなく、世
の中にはいろんな形でいい加減に流布している情報も多いと思われます。自分の思い込
みや世間の風評をチェックする意味でも、そして犯罪という人間のある意味本質的な営
みについてよく知るということからも、本書は有益であると思われます。
著者に疑問を感じる
率直な意見、著者に疑問を感じる。この本を執筆したのはまだ若年層の方だろう。かく言う当方も高校生であり、著者に意見する権利はないのかもしれないが…ペンネームがふざけすぎではないだろうか。それと、著者の言葉遣いには非常に疑問を感じ、これをよく公に出したと感じてしまう程である。
二・二六事件での青年将校の事をニートと呼んだのは間違いではないだろうか。彼等はニート等ではないし、事件を起こした経緯も当方としては頷ける物である。彼等を肯定するつもりはないが、言い回しが非常に腹立だしい。二・二六事件の事と少年犯罪は別物だと当方は感じるのだが…如何なものだろうか。
戦前であろうと現代であろうと犯罪は犯罪である。許されるべきではないし、法により裁かれるべきではあると思う。ただ、言わせて貰うなら…戦前と現代では『殺し』という事の重大さは遥かに違うのではないだろうか?現代では殺しは犯罪だが、例えば、宮本武蔵がいい例であるが彼はあれだけの人を殺しても尚勇者である。殺しが当然であったと言っても構わない。
当方が述べたいのは、現代の犯罪と過去の犯罪を比べる事自体が間違っているのではないか、と言う事である。故に、著者に疑問を感じるのである。
こういう本はやはり、どれが正しいか否かの正解はないのではないのだろうか…?
面白いテーマを見つけましたね
面白いテーマを見つけたと思う。
昔はよかったという人に対し、そうではなかった例を新聞記事などからいやというほど見せ付ける。国会図書館にこもり古い新聞と雑誌を調べつくした結果のようだ。
小学生の殺人、女学生の「桃色交友」旧制高校生の低俗さなどを新聞記事から例証する。その範囲では面白いというしかない。
しかし、好きになれない本だ。文体の軽さ。地域や階層や、個人の個性の違いを超えて人間を一くくりにしてしまう強引さ。アジテータとしての才能は一流なのだろうがーー。
そんなわけで星3つ。
俗説に反して
これはすばらしい。ワイドショーがたれ流す俗説に反して、今が犯罪の少ない時代であることを知ってはいたが、戦後最も犯罪の多かった「三丁目の夕日」の昭和30年代と比べても、昭和の戦前期間がいかにひどい犯罪が続出し、親殺し、幼児虐待、いじめ、教師の犯罪が日常茶飯事だったかを著者は国会図書館に籠って余すところ無く調べ上げている。
書店子の言うとおり、著者の真意はメディアの有り方にあることは承知の上で(むしろそちらの方は周知のこととして)、二・二六事件についての考察が面白い。青年将校はニートで、当時頻出していた親殺し、老人殺しの延長上に事件があったとすれば、柳家小さんは要するに不良少年の舎弟だったのですね。
今でも徴兵制を説いている人がいて、まぁ、ニートを自衛隊に送り込めば失業対策としては意味があるでしょうね。しかしながらAmazonによるとこの本と同時に赤木智弘さんの「若者を見殺しにする国―私を戦争に向かわせるものは何か」が売れているそうで、そういう人たちは実は古典的なニート犯罪たる二・二六の再来を願っているのでしょう。
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