
佐藤優のバックボーン
佐藤優のバックボーンは神である。
本書を読んで彼の得意な言論活動の軸はキリスト教神学であることを改めて確信した次第である。彼の神学部大学院卒という経歴やこれまでの著作を読めば佐藤優の言説の中で神の占める位置の大きさはある程度理解できるだろう。それでも私の中では保守主義やマルクス主義といった要素との絡みで何が最も重みをなしているか定かでなかった部分があった。しかし、本書を読み終え、その疑問は氷解した。佐藤優の中心には神がいる。
キリスト教神学から派生している要素であるが、寛容という思想も佐藤優の中で大きな位置を占めていることも始めたわかった。それだけでなく、寛容という思想の大きさと深さも思い知らされた。私の神とあなたの神は違うかもしれない、私にとって絶対的なものとあなたにとって絶対的なものは同じではない、そして相手のそのようなあり方を絶対無条件で受け入れる。寛容とは表面的な意味のごとくに容易なものではない。相当の覚悟を求める思想であり、また佐藤優はそのような覚悟を持った人物であることが本書の至る所から感じることが出来る。
多彩な文筆活動を繰り広げている佐藤優の著作の中で本書が持つ特色とはどのようなものだろうか。
本書で展開されている論説や対談の内容も十分に興味深いが、佐藤優が何をどのように考えるのかという過程を伺うことが出来ることができるというところにあると言えよう。
左右を蹂躙する小論集。佐藤優入門編としても
本書は、著者が、2006-7年に、さまざまな雑誌や新聞などに発表した文章を、テーマごとにうまくまとめ、そこに著者自身の短い自註が加えられた、一種の小論集である。
しかし、ただ単に、佐藤優ブームに乗って、余った文章を適当に集めて一冊にまとめたわけではない。著者なりの計算とメッセージが込められているのである。
本書に収録されている文章の出自を調べてみれば、おのずと判る。
「月刊日本」に「情況」、「文藝春秋」に「朝日新聞」…興味の無い人には「so what!?」となるだろうが、ある程度長く深く日本の活字文化に接してきた人なら、佐藤優の登場する活字媒体の「左右の広がり」に、誰もが奇異の目を向けるに違いない。
本書には収録されていないが、著者は「週間金曜日」にも寄稿している。その同一人物が同じウエイトで「文藝春秋」にも…?
要は右に左にと閉塞した現在の日本の言論界に、バズーカ砲を放っているのだ、佐藤優は。
ほんとに、右翼や左翼を自ら任じている人、リベラル気取りの市民活動家、ついでに日本共産党の支持者にも、広く広く本書が読まれて欲しい。
まだ、佐藤優という人と付き合おうかどうか、迷っている人への名刺代わりの一冊としても、本書は有効だ。
作家・起訴休職外務事務官佐藤優の本の読み方・考え方
佐藤優の本の読み方・考え方を、様々な新聞・雑誌寄稿文を編むことにより提示した文庫本である。
タイトルの「国家と神とマルクス」に示される、佐藤氏の問題意識・思考の道筋の骨格と主要テーマが読みやすさを伴って展開されている。
『状況』編集長白井氏との対談は、佐藤優氏にとって絶妙の対談相手・インタビュアーとしての人を得て、快調との印象を受ける。
書き下ろしとは別の、不統一の中の調和が味わえる一冊となっている。
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