
Disk1
Disk2
歴史的邂逅 (3)
同曲目での既出CDのSHM−CD化で音質が改善された。カール・ベームの指揮から生まれるウィーン・フィルの音色には練り上げられた滑らかさと落ち着いた光沢があって、それがこのピアノ協奏曲第1番の冒頭のような激しく高揚する緊張感を表現する時でも決して損なわれることなく、常に鷹揚で気品のある風格を保っている。彼の指揮にはブラームスの音楽の内部から溢れ出す激情をことさら誇張せずに楽想自体から自然に生み出されるエネルギーをそのまま引き出している必然性が感じられる。また常に自然体でありながら感情の機微を伝える術を知っていた数少ない指揮者の一人だ。録音は1979年。
一方第2番はアバドの指揮に替わるが、第1番とは対照的にこの曲の持っている抒情性を最大限生かしたリリシズムに満ちた解釈が聴き所だ。哲学的な深刻さよりもむしろ平明かつ流麗でしかも張りのあるダイナミックで視覚的な表現の選択はイタリア人指揮者ならではのものだ。ベームに先立つ1976年の録音。
最後にポリーニのソロについてだが、彼の能力の並外れた点は曲全体を客観的に俯瞰することによってその構造を確実に把握し、聴く側に一切の曖昧さを排した一点の曇りも無い明瞭なイメージを伝えるところにある。その為には細部の表情付けに拘泥することは避け、一種の冷徹さを持って演奏を推進していく。良く言われる輝かしく彫りの深い表現というのは決して彼の明晰で精緻な打鍵のみを指しているのではなく、この奏法をあくまでも表現手段として用いた頭脳的な曲作りに彼の本領が発揮されている筈だ。ポリーニの音楽には陰影に包まれた憂愁の美といったものは期待できないが、彼が伝統的なドイツのピアノ音楽を完全に手中に収めているのはこうした理由からだろう。
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